【育成講座】第六章 財務・税務対策の考え方
未来を担う後継者と経営者を支援する
伴走型事業承継コンサルタントの育成講座
事業承継において、後継者や経営者が直面する様々な課題や問題を解決するために、専門的な知識や経験を持った伴走型コンサルタントの存在は欠かせません。しかし、現在はこの分野におけるコンサルタントの人材不足が問題となっています。そこで、未来を担う育成者たちが伴走型コンサルタントとして活躍できるよう、この育成講座を開催いたします。
育成講座の内容の紹介:
- 事業承継における基礎知識
- 伴走型事業承継コンサルタントの役割・業務内容
- 後継者の選定と育成方法
- 経営者と後継者の意思疎通の方法
- 事業承継の計画策定方法
- 財務・税務対策の考え方
- DXを活用した事業承継の取り組み
- まとめ
本講座では、実践的な手法を中心に、事業承継に関するあらゆる課題に対応できる伴走型コンサルタントの育成を目指します。また、専門家の講義や事例研究、グループワークを通じて、参加者のスキルアップを支援します。
第六章 財務・税務対策の考え方
第六章では、事業承継における財務・税務対策について解説します。以下のような項目を扱います。
- 財務・税務対策の意義
- 事業評価の重要性
- 相続税の節税対策
- 贈与税の節税対策
- 資産の活用
- 個人年金保険の活用
- 民間信託の活用
- まとめ
1.財務・税務対策の意義
財務・税務対策は、事業承継において非常に重要な要素です。事業承継に伴う財務・税務リスクを最小限に抑え、スムーズな承継を実現するためには、事前に対策を講じることが必要です。
財務・税務対策により、以下のようなメリットが期待できます。
【財務面】
・事業継承に必要な資金調達を円滑に行うことができる。
・事業承継後のキャッシュフローを安定的に確保することができる。
・事業承継に伴うコストやリスクを最小限に抑えることができる。
・事業継承後の財務体質を強化することができる。
【税務面】
・事業承継に伴う税務リスクを回避することができる。
・相続税や贈与税の負担を最小限に抑えることができる。
・税制改正による影響を事前に把握し、対策を講じることができる。
これらのメリットを享受するためには、財務・税務面での課題やリスクを事前に洗い出し、適切な対策を講じる必要があります。事業承継においては、財務・税務対策は計画の重要な一部であるため、事前に十分に対策を検討することが必要です。
2.事業評価の重要性
事業承継において、事業評価は非常に重要な役割を担います。事業評価とは、企業の経済的な価値を測定することであり、財務・税務対策においても必要不可欠な要素です。
事業評価を行うことで、事業価値や株価、資産の評価額を明確にすることができます。これにより、承継時の譲渡価格や相続財産の評価、贈与税の算定などに影響を与えます。
また、事業評価は、事業の強みや弱み、リスク、成長性などを把握するための手段としても重要です。これらの情報は、後継者や事業を引き継ぐための資金調達先などに対して、説得力を持ったプレゼンテーションを行うために必要不可欠です。
事業評価は、専門知識を要するため、外部の評価会社に委託することが一般的です。評価会社は、企業の財務諸表や業績、市場動向などを総合的に分析し、事業価値を評価します。また、評価結果に基づいて、事業の強みや弱み、リスク、成長性などを報告することができます。
事業評価は、事業承継において欠かせない要素であり、適切な評価を行うことで、スムーズな承継を行うことができます。
3.相続税の節税対策
相続税は、遺産を相続する人が支払う税金であり、相続税の額は相続人数や遺産の評価額によって異なります。事業承継においては、相続税が大きな課題となることがあります。相続税が支払えない場合、事業継承が困難となることもあるため、相続税の節税対策が重要です。
相続税の節税対策には、以下のような方法があります。
【事前贈与】
相続人に事前に贈与することで、相続税を軽減することができます。事前贈与は、相続税の負担を軽くするだけでなく、後継者に資金を提供することができるため、事業継承にも有効です。
【事業承継者特例】
事業を継承する場合には、相続税法に「事業承継者特例」という特別な制度があります。この制度を利用することで、相続税の負担を軽減することができます。ただし、制度を利用するためには、一定の要件を満たす必要があります。
【相続税の繰延納税】
相続税の負担が大きい場合には、相続税の繰延納税を行うことができます。繰延納税は、相続税を分割払いすることで、負担を軽減することができます。ただし、繰延納税を行う場合には、一定の手続きや条件を満たす必要があります。
相続税の節税対策は、相続人や事業継承者にとって非常に重要です。相続税の負担を軽減することで、事業継承の可能性が高まり、事業の継続や発展につなげることができます。ただし、相続税に関する法律や制度は複雑であり、専門的な知識が必要となる場合があるため、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。
4.贈与税の節税対策
贈与税とは、贈与をする際に課せられる税金であり、相続税と同様に事業承継においても節税対策が必要です。贈与税は、贈与した財産の価値に基づいて課税されます。
贈与税の節税対策の一つに、「贈与対象者の選定」があります。贈与対象者によっては、贈与税の非課税枠や控除額が異なるため、贈与する際にはその点を考慮する必要があります。また、贈与による相続税の負担軽減を目的として、贈与と同時に相続放棄の契約を結ぶことも可能です。
さらに、事業を存続するために必要な設備投資や研究開発などについて、贈与税の非課税枠や控除額を活用することで、贈与税を節税することができます。
また、不動産や株式などの贈与においては、贈与時の評価額が重要です。評価額を下げるためには、贈与時に評価済みの資産を贈与するのではなく、贈与時に評価されていない資産を贈与することが有効です。
以上のような贈与税の節税対策を行うことで、事業承継において贈与税の負担を軽減することができます。しかし、贈与税の節税対策は複雑であり、税務署の判断によっては有効でない場合もあります。そのため、事前に税理士や税務の専門家に相談し、正確な情報を得ることが重要です。
5.資産の活用
事業承継において、資産の活用は重要な財務・税務対策の一つです。資産の活用には、以下のような方法があります。
【株式や不動産の贈与】
株式や不動産の贈与によって、相続税や贈与税の負担を軽減することができます。また、贈与によって相続税や贈与税を節税することができますが、贈与税は贈与の際にかかる税金であるため、贈与前に必要な資金の評価が必要です。
【生命保険の活用】
生命保険は、相続税や贈与税の負担軽減にも活用できます。生命保険には、被保険者が死亡した場合に、一定額の保険金が受け取れるタイプと、一定期間が経過した場合に一定額の保険金が受け取れるタイプがあります。前者は死亡保険金として相続税や贈与税の負担軽減に活用でき、後者は資産運用の一環として活用できます。
【投資信託や不動産投資の活用】
投資信託や不動産投資は、資産運用の一環として活用できます。投資信託は、金融商品取引法に基づく公正かつ透明な運用が求められており、リスク分散にも役立ちます。不動産投資は、不動産市場の動向によって価格変動が起こることがありますが、安定した収益を期待できることがあります。
これらの方法を活用することで、事業承継に伴う財務・税務対策を行うことができます。ただし、具体的な方法の選択や実施にあたっては、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
6.個人年金保険の活用
個人年金保険は、個人が自己の老後資金を確保するために加入する保険の一種であり、事業承継においても活用されることがあります。
具体的には、事業を後継者に引き継ぐにあたり、前任者が加入していた個人年金保険について、後継者に引き継がせることで、後継者が老後の資金を確保することができます。また、後継者自身が新たに個人年金保険に加入することもできます。
個人年金保険には、掛金を支払うことで将来の年金受給額が確定する「年金型」と、掛金を支払わずに一括で一定の金額が支払われる「一時金型」があります。年金型の場合、保険料の支払い期間や支払額を調整することで、後継者に合った老後資金の確保ができます。一方、一時金型の場合は、保険料を一括で支払うことで将来の老後資金を一括で確保することができます。
個人年金保険は、所得税や住民税の非課税枠を超える部分については課税されますが、所得税や住民税の非課税枠を有効活用することで、税金の節税につながります。また、個人年金保険は、相続税評価額の特例措置の対象となるため、事業承継においても相続税の節税対策の一つとして活用されることがあります。
7.民間信託の活用
民間信託とは、信託契約を締結することによって信託財産を信託法人に移転し、受益者に利益をもたらすことを目的とする制度です。民間信託は、相続対策や資産管理、事業承継など、様々な目的に活用されています。
民間信託の最大のメリットは、相続税や贈与税などの税務面での優遇措置があることです。信託財産は、信託財産管理者によって管理され、受益者が信託財産を直接所有するわけではありません。そのため、相続税や贈与税の対象となる資産を減らすことができます。
また、民間信託は、遺言や相続によって資産を引き継ぐ場合にも有効です。例えば、相続人が複数いる場合、民間信託を活用することで、資産分割によるトラブルを未然に防ぐことができます。
一方、民間信託にはデメリットもあります。例えば、信託財産管理者に信頼できる人物を選ばなければならないという点が挙げられます。また、信託契約によって信託財産が移転するため、信託契約の解除ができないという点も注意が必要です。
民間信託の利用にあたっては、信頼できる信託財産管理者を選ぶこと、信託契約の詳細な内容を理解することが大切です。また、税務面での優遇措置があるため、税理士や税金専門家に相談することもおすすめです。
まとめ
第六章では、財務・税務対策の重要性について説明し、具体的な対策について解説しました。
財務・税務対策は、事業承継において非常に重要であり、計画的かつ適切な対策が必要です。まず、事業評価を行い、その評価額に基づいて相続税や贈与税を計算し、その節税対策を検討することが重要です。具体的な対策としては、相続税については、生前贈与や相続時精算課税制度、また、贈与税については、贈与税非課税枠の活用、定期贈与などがあります。
また、資産の活用による対策も重要であり、具体的には、個人年金保険や民間信託の活用が挙げられます。個人年金保険は、将来の年金受給資金を確保するためのものであり、相続税の非課税枠や贈与税の非課税枠を上回る場合にも、非課税で資産を移転することができます。民間信託は、信託契約に基づいて信託財産を信託財産管理人が管理し、信託財産受益者に対してその利益を支払うことにより、資産移転効果を得ることができます。
以上のように、財務・税務対策は、事業承継において必要不可欠なものであり、適切な対策を行うことにより、円滑な事業承継を実現することができます。
育成講座の内容の紹介: